文明と切り離された山中にて、万が一の災時に役立つ「ファーストエイドキット(簡易救急箱)」に常備しておくアイテムを検証してみました。
怪我さえしなけりゃいいじゃない
「簡易救急セットに専用の入れ物なんて必要ないっしょ」
と、安易な気持ちで「ジップロック」の中に薬やら包帯やらを無造作に詰めていたのは遠い昔・・・。
登山中に「スズメバチ」「マムシ」等、運が悪ければ命まで持って行かれる系の生物にエンカウント(遭遇)する頻度が高くなったり、「藪漕ぎ」の途中で巻き付いたバラ科の棘で、顔面や首に刺し傷が増えていくのを経験してからというもの、本腰を入れたファーストエイドキットの構築を考えるようになりました。
そんなこんなで、入れ物として選んだアイテムは「deuter(ドイター)ファーストエイドキット」
3種類の大きさがあるうち、中間の大きさのものを購入。
「deuter(ドイター)ファーストエイドキット」
実際に手に取ってみるとペラペラで小柄なポーチでした。
値段が「2,400円」と、購入を躊躇するレベルの価格帯とあってか、各所の縫製がしっかりしており、手荒に扱っても破れる気配はありません。
本体に使用されている布は“破れや割け”に強いリップストップ生地。
内面は防水仕様っぽい雰囲気ですが、ファスナーが「止水ファスナー」では無いため防水性はそう期待できそうにない模様。
このアイテムは「入れ物(袋?)」のみで、薬や包帯などの内容物は一切梱包されていせん。
これで「2,400円」を高いと見るか安いと見るか・・・
モールス信号や緊急時のボディーランゲージ等、緊急時に役立つであろう豆知識が表記されています。
(´-`).oO(これは日本語表記にローカライズして欲しかった・・・)
中身を展開した図。
ペラっと展開できるポケットスペースがあり、嵩張りがちなアイテムを効率良く収納できそうな予感。
伸縮性は皆無の生地ですが、大きくマチが取られているため大判の湿布薬も入りました。
ケースの中には薄くコンパクトな「緊急時のマニュアル」が1冊。
これは!
う〜ん・・・
まったくわからん・・・
国内販売をする際は、この辺りの配慮(文章の翻訳)もしてもらえると嬉しいですね。
思いつく限り入れてみた
今まで経験した苦い思い出とこれから起こりそうなトラブルを想定して、ドラッグストアや100円ショップを駆け回ること数時間。
「あれもこれも!」と詰め込んでいくと、あっという間に容量いっぱいとなってしまいました。
錠剤や液漏れの可能性がある小物や、ポーチ内でを小分けにするためジッパー付きの小袋と、
アメニティー用の「クリームケース」と「プラ製の化粧水ボトル」。
※液体系の薬品はジッパー付き袋と併用して使います。
内容物を取り出して並べるとこんな感じ。
「この小さなポーチにこんなに入ってたの!?」
と、目を疑いたくなるほどの収納量です。
収納アイテムの内訳
今回は「自分+もう一人 & 緊急事態に陥って3日しのぐこと」を想定した内容で構築しています。
内服薬
切り離し、コンパクトにして小袋に小分けにしています。
向かって左から、
・痛み止め(ロキソニン)
骨折などを想定した鎮痛剤として。胃に負担をかけるデメリットがありますが「緊急時の即効性」を優先しました。
・下痢止め(ストッパ)
用を足せない状況下での対処に。
・頭痛薬(常用しているもの)
偏頭痛持ちのため必須。高山病には効力無し。
普段飲み慣れていない薬に関しては、説明書も一緒に保管しておくとイザというときに役立ちます。
ほんの少し重量が増してしまいますが憶測で服用するのも怖いので迷わず封入。
説明所を紛失している薬については、マジック等で1回につき何錠服用すれば良いのかをメモを記載。
・総合風邪薬
普段服用しているものを小分けにして常備。
自分以外のパーティーも想定しての量を小分けにしていきます。
マスキングテープを貼って内容品をメモ。
飲み慣れている錠剤のため、量は簡単なメモ書き程度で留めておきます。
消毒/皮膚薬 関連
長袖/長ズボンを着用していても険しい岩場を滑り落ちたり、棘のある木々に絡まれると普通に皮膚までダメージが届きます。
登山においては一番お世話になる可能性の高いアイテムになることは間違いありません。
左上から
・消毒液(マキロン – 軟膏タイプ -)
通常のタイプは容量も大きく、液漏れの心配があったため軟膏タイプを選びました。小さな傷ならばこれで・・・行けるハズ。
・化膿止め(クロマイ- P軟膏 ※ステロイドを含む)
主に切り傷に対する薬。水がふんだんに使えない場合は十分な消毒が行えず、患部が化膿する恐れもあるため抗生物質を含むものを選択。
・皮膚用鎮静薬 (オイラックスA ※ステロイドを含む)
虫さされや「うるし」などのかぶれ等から来る「かゆみや発疹」などを想定。
※上記2つの塗り薬は「ステロイド」を含んでいますが、緊急時の即効性を配慮して選択しました。
衛生保護薬
どれも家庭で使用しているモノを小分けにしました。
・消毒液(手ピカジェル)
プラの化粧水ボトルに入れて保管。水が制約された環境下での手の消毒用に必須アイテム。
・火傷した皮膚の保護(白色ワセリン)
調理の際に何度も火傷した経験があり、その度に「ワセリンがあれば・・・」と後悔したため。容器の蓋には入れ替えた日付を記載。
テーピング/傷口の保護
サージカルテープや絆創膏、アルコール消毒綿などは100円ショップでも「日本製」のアイテムが購入できます。
・テーピングテープ
足首や指の捻挫を想定。その他トレッキングポール(杖)やシェラカップなどのグリップ強化などに応用が可能。
・サージカルテープ
包帯や三角巾を留めるため。
・絆創膏
手元にあった何種類かをサイズ別に選別。
・包帯/三角巾、ガーゼ類
傷口の圧迫や保護、骨折時の補助布として。
・アルコール消毒綿
傷口の消毒用。中身の乾燥を防ぐため個包装のものを選択。
・パッケージング綿棒
衛生面から個包装のものを選択。
鎮静/冷却/保温
シート状のものはどれもポーチに入るギリギリのサイズのため、多くの枚数は常備できませんでした。
・捻挫/腰痛、筋肉痛の緩和(ロキソニンテープ)
過去に一度、岩場からの着地をミスり捻挫して下山時に泣く目にあったため常備。
・体温の保護(使い捨てカイロ)
春先や秋口の微妙な時期への対処のため。また、急なお腹の不具合にも最適。
・発熱時の冷却(熱さまシート)
突然の発熱時や、火傷の冷却用に。
その他の道具
よりコンパクトで「実用性のあるアイテム」を厳選しました。
・虫さされ、蛇に噛まれた際の毒抜き(ポイズンリムーバー)
過去にアシナガ蜂に刺された時に使用しましたが、活用後の恩恵がどれくらいあるのかは不明。
毒を口で吸い出すのは口内の傷(口内炎や歯茎の炎症)から毒が入る可能性があるため、専用の吸い出す機材があるのは精神的に心強いかもしれません。とりあえず吸引力は半端無いので何かは確実に吸い出されている感はあります。
・ハサミ、ペンチなどのマルチツール(レザーマン スタイルps)
展開するとペンチ、ハサミ、爪ヤスリ、おまけ程度ですが “とげ抜き”が一本にまとめられたツール。
レザーマンには珍しく「ナイフレス(小刀が付いていない)」のため、別の意味でも安心。
小さくてもペンチはガシガシ使える強度があり、トレッキングポールやアルコールストーブの修理に使った経験アリ。
登山で一番酷使しているアイテムかもしれません。
・とげ抜き & 5円玉
これも一番多用してるツールかもしれないです・・・
以前行った藪漕ぎの際、頭部へしなった竹が降りかかり小さな棘が刺さって往生しましたが、単独登山だったのでどうしようもありませんでした。
全て詰めるとこんな感じ
選別に選別を重ねた精鋭達を集めてポーチに詰めるとかなりの厚みになりました。
広めに取られていたマチ部分が完全に延びきっています。
一般的なボックスティッシュの高さと同じくらいでしょうか。
重量は「464 g」
実に500mlペットボトル1本分に相当する重さになってしまいました。
これを「重い」と取るか「軽い」と見るか・・・
総評とまとめ
内容量に比例して「困った時の安心感」がいっぱい詰まっている気がして個人的に満足のアイテムです。
中身の選別でいろんなお店を駆け回りましたが「RPGの仲間」を集める感覚で非常に楽しく、かけた予算も100円ショップを利用+自宅に元々あった薬を使用したため3千円ほどの枠で済みました。
気になる重量の面は、登る山を想定した内容でその都度組んでいこうと思います。
(とりあえず登山中に一番お世話になるのは調理中の火傷ですね)
今回ご紹介した「ファーストエイドキット」は登山用だけでなく、突然の災害時に持ち出せることも意識してセッティングしてみました。
実際に使うことが無ければそれが一番良いことですが転ばぬ先の杖 ならぬお守りとして愛用していきたいです。